実シーンの照明環境の変化を考慮した事前生成型拡張現実感

赤熊 高行 (1251002)


スマートフォンやタブレット等のモバイル端末を用いたモバイル拡張現実感 (Augmented Reality:AR)は,史跡において過去の景観を仮想体験するシステムをはじめ,様々な目的で利用されている. 近年,新たなモバイルARの実現手法として,事前に撮影した全方位画像にあらかじめ高品位に仮想物体を重畳合成しておき,ユーザの利用時には,事前生成した画像からユーザの向きに応じた適切な方向を切り出して画像提示を行う事前生成型 AR システムが提案されている. 事前生成型 AR システムは,リアルタイムに撮影された現在のシーンを用いる従来のモバイル ARシステムと比較し,(1) 撮影画像と仮想物体の間でジッタ・ドリフトが生じない,(2) 比較的計算コストの高い高品位な光学的整合性問題の解決手法を適用できる,(3) モバイル端末で行うオンライン処理が軽量である,という特徴をもつ. 一方,事前生成型ARシステムでは,事前に撮影した環境とユー ザが利用する環境の季節や天候の違いによって撮影画像と現実世界間の照明環境が異なり臨場感が損なわれるという問題が生じる. 本発表では,事前撮影された景観と実際の現実世界の見えとの間に生じる,天候や光源位置の違いなどの照明環境の変化を考慮した事前生成型AR システムを提案する. 提案手法の有効性を検証するために,様々な時期・天候下で撮影した全方位画像データベースを作成し,被験者実験を行った. 実験により,照明条件を考慮しない事前生成型ARシステムと比べ,臨場感が向上していることを確認した.