波面合成と多点音場制御による統合型音場再現における埋め込み波面の検討
明戸 俊英 (1151201)
近年,より臨場感あふれる音響空間の再現を目指し,音場再現技術の研究が盛んに行われている.
音場再現技術とは,所望の音場を別の空間にて知覚上完璧に再現することを目的とした技術であり,
この目的実現のため,多くの音場再現技術が提案されている.
本発表では,この目的実現のため多点音場制御法と波面合成法を組み合わせた
統合型音場制御法の埋め込み波面に関する検討を行い,新たな埋め込み波面と統合型音場制御法の問題解決法を提案する.
統合型音場制御法は,多点音場制御法と波面合成法という2つの音場再現法を組み合わせた手法であり,
多点音場制御法の持つ再現精度の高さと波面合成法の持つ再現領域の広さを活かし,
リニアスピーカアレーのような簡易なスピーカシステムを用いて広範囲・高精度に再現を行うことが可能である.
現行の統合型音場制御法は,多点音場制御法 multi-point controlled wavefront synthesis (MCWS) に対し
波面合成法 wave field synthesis (WFS)を埋め込んだ手法であるが,他の波面合成法を埋め込み波面とした場合に関する検討は行われておらず,
未だ性能向上の余地は残されているといえる.
また,多点音場制御法においては予め制御する点の位置を決定するため,
仮にユーザが制御点位置から移動した場合,多点音場制御法の効果を十分に得られないという問題もある.
そこで,本発表ではまず,統合型音場制御法に対して埋め込む波面の検討のため,
波面合成法としてspectral division method (SDM)を選択し,
実環境においてWFSとの比較実験を行うことにより,WFSよりも優れた特性を持っていることを明らかにする.
次に,多点音場制御法において規定したユーザ位置からユーザが動いた場合に再現精度が劣化する問題を解決するため,
マルチモーダルセンサーであるMicrosoft Kinect for Xbox 360 (Kinect)を画像センサとして用い,
Kinect for Windows SDKにより提供されているスケルトントラッキング機能を用いてユーザ位置推定を行うことでこの問題解決を目指す.
さらに,SDMに局所音場合成と呼ばれる手法を適用することで,Kinectにより推定したユーザ方位に,
処理を行わないSDMに比べ,より高精度に音場を再現する方法を提案し,
この手法の優位性をシミュレーション実験及び主観評価試験を行うことにより明らかにする.