細胞膜の粘弾性を考慮した成長円錐の局所的な形状変化予測モデル

中平悠太 (1151075)


細胞移動のメカニズム解明は細胞生物学の分野における重要な命題の一つである.例えば,神経突起の伸長においては,神経突起の先端部のてのひら状の構造体である成長円錐が細胞移動を行う.

細胞移動のメカニズム解明のため細胞形状の物理的制約(細胞膜の張力など)を考慮した細胞の形状変化の数理モデルの構築が比較的単純な形状の細胞において試みられている.しかし成長円錐は複雑な形状をとるため既存の数理モデルの適用が困難であり,まず成長円錐の形状の物理的制約を調べる必要がある.そのためには物理的制約を考慮した形状変化の予測モデルが有用である.

そこで本研究では成長円錐に適用できる物理的制約を考慮した形状変化の予測モデル構築を目的とした.ベクトル自己回帰モデルを元にした局所的な形状変化間の距離と細胞形状の曲率をパラメーターとして加えた細胞形状の局所的な形状変化予測モデルを提案した.

モデルを検証した結果,AR 次数1 次のモデルが予測誤差最小であった.加えて距離のパラメーターが予測に重要であることが示唆された.これらの結果から近隣の局所的な形状変化が相互に影響しあう可能性が高いことが実データから確認できた.