ターボブースト及びハイパースレッディングを考慮したマルチコアプロセッサ向けタスクスケジューリングアルゴリズム

脇坂 洋祐(1151118)


近年,データセンタを始めとする様々な分散並列環境や多くの分野でマルチコアプロセッサを搭載した計算機が広く利用されるようになり,システムを効率的に利用するため,様々な環境を想定したタスクスケジューリング手法が提案されている. 一方で,マルチコアプロセッサの処理性能を向上させるため,ターボブースト及びハイパースレッディングと呼ばれる処理高速化及び並列処理技術が開発され,最近のプロセッサには標準で搭載されるようになった. しかし,既存のタスクスケジューリング手法は,これらの最新技術を考慮しておらず,タスク間通信の高速性のみを考慮したスケジュールを行うため,これら高速化技術の恩恵を受けることができない. 以上から,より高性能な環境をより低コストで提供するため,これら最新の技術及び特性を効率的に利用できるタスクスケジューリング手法が強く望まれている.

本発表では,上記の問題を解決するため行った実機実験を通したターボブースト及びハイパースレッディングによる動作周波数モデルの作成と作成したモデルを用いてタスクの処理時間を正確に推定することによる両技術の考慮とネットワークコンテンションの考慮を行うマルチコアプロセッサ向けのタスクスケジューリングアルゴリズムを提案を述べる.

提案手法を評価するため,シミュレーションと実機実験を行った. その際に用いた比較手法として,既存のネットワークコンテンションを考慮した手法に本研究で作成した動作周波数モデルを組み込みターボブースト及びハイパースレッディングによる動作周波数の動的変更を考慮しながら各タスクが最短で処理完了できるようスケジュールする手法を2種類用意した. 実験の結果,提案手法は全体の処理時間をシミュレーションで最大 43% ,実機実験では最大で36% 短縮できることを確認した. 加えて,生成した スケジュール結果と実機実験の結果の比較から,処理時間の差が7% 以下であることを確認し,実環境において提案手法によるスケジュールが有効であると判断した.