ユビキタスシステムの協調開発を支援するスマートスペースシミュレータの設計と開発

吉田 昌剛 (1151115)

ユーザや外部環境の状況に応じて,情報家電などのデバイスを自動制御するユビキタスシステム(スマートスペース)に関する研究開発が活発に進められている.多数のセンサや情報家電によって構成されるスマートスペースと呼ばれる空間では,利用者の快適性や利便性を向上させることを目的とし,様々なサービス(快適な室内温度の維持や照明の自動点灯など)を実現する. 規模の大きなスマートスペースは,故障デバイス数や人為的ミスの増加を招き,サービスを適切に実現できないという問題を増加させる.更に,サービス数の増加や高度化に伴い,特定のサービスに対して他サービスが予期しない影響を与える問題が発生することがある.
そこで,スマートスペースの開発を支援するためのスマートスペースシミュレータには,問題を早期に発見して,その原因を容易に特定する機能が必要である.しかし,既存のスマートスペースシミュレータでは,スマートスペースの規模の拡大や,それに伴って発生する問題を解決する手段についての想定がなされていない.
本研究では,規模の大きなスマートスペースの開発を支援することを目的として,複数の開発者が協力して問題発見と原因特定を行うことを支援する機能を,既存のスマートスペースシミュレータに拡張した.スマートスペース開発のプロセスを考慮し,(1)複数端末でのシミュレーションの同時実行機能,(2)シミュレーション情報の実時間表示機能,(3)任意の情報を任意のレイアウトで表示できる機能,(4)仮想住人の操作機能,(5)アラート機能を必要な拡張機能として設計し実装した.
評価実験として,提案機能を備えたシミュレータを,2人時で使用した場合と1人時で使用した場合とについて,シミュレーションの実行結果を比較する実験を行った.不具合があらかじめ設定されているスマートスペースを用いて,1人時と2人時の問題発見数と原因特定数を比較したところ,問題数に対する原因特定数の割合は,2人時の平均は65%,1人時の平均は30%となり,複数ユーザで提案機能を利用することにより,問題発見や原因特定の精度を高めることが出来た.