脳機能に対してMRIを用いた様々な研究が行われている.その中で拡散テンソルトラクトグラフィと呼ばれる脳内の神経線維を三次元で描出する方法がある.脳には記憶機能に関わる神経線維が存在するが,鉤状束や脳弓等の記憶機能に関する代表的な前頭側頭葉領域の神経束はトラクトグラフィで描出でき,拡散テンソル画像(DTI) の指標である拡散異方性(FA) やみかけの拡散係数(ADC) について,トラクトグラフィ領域に限定した値が得られる.また,記憶機能検査では,被験者の記憶機能のスコアが取得でき,MRスペクトロスコピー(MRS) を用いた手法では,前頭側頭葉領域の代謝物の濃度指標が取得できる.現在,先行研究ではDTIと記憶機能検査の相関を調査したものはあるが,MRSのスペクトル指標を含めて統合的に三者の関係を調べた報告はない.本研究では記憶機能領域におけるDTIと記憶機能検査,MRSの関係の定量的な評価を行った.