走行車両の端末をアクセスポイントとして利用する屋外ユーザ向けWi-Fiオフローディング

藤井 賛 (1151090)


スマートフォンの普及に伴い,携帯電話網(以下,3G)へのトラフィックの集 中による通信品質の悪化や通信断が大きな問題となっている.これを解決する 方法として,3Gの代わりにWi-Fiを用いて通信を行うWi-Fiオフローディングが 注目されている.しかし,歩行者など屋外で活動するユーザは,Wi-Fiアクセス ポイントのエリア外となることが多く,オフローディングを行う機会が少ない という問題がある. 本発表では,屋外ユーザの付近を走行する車両を中継ノードとして利用するこ とで,Wi-Fiオフローディングの機会を増加させる方式を提案する.提案方式で は,インターネットから屋外ユーザ方向への下りトラフィックについて,その オフローディングを成功させるために,屋外ユーザの付近を走行し,かつ安定 して通信可能な車両を適切に選択する必要がある.そこで提案方式では,屋外 ユーザが車両との遭遇時にある程度長い通信時間を確保できるよう,両者の主 な通信場所を,屋外ユーザが現在向かっている交差点付近とした.さらに,そ の交差点の周辺に設置されている複数のWi-Fi APから,各AP近辺の道路の交通 量,および各車両が目標の交差点へ到達する確率を考慮し,データを中継する のに適したWi-Fi AP を複数選択する.それらのAPを用いて屋外ユーザ向けのデー タを車両に預けた後,車両は交差点付近で屋外ユーザと出会い,屋外ユーザに 対しデータを届ける. 予備実験として,実環境での車両と屋外ユーザとの通信性能を計測し,車両と 屋外ユーザ間の通信場所として交差点を想定することの有効性を示した.ま た,その予備実験で得た結果を用いて,計算機シミュレーションによる評価を 行い,提案手法と他の手法による下りトラフィックの総オフロード量を比較し た.その結果,提案方式は,中継APの選択数が4以下では,交差点に最も近い APを選択する手法と比べ下りトラフィックの総オフロード量を最大を37%改善で きた. 本発表では,提案手法の詳細と,評価実験における提案手法の評価について発表する.