レビュー管理システムの利用履歴を用いたレビュープロセスの分析

濵﨑 一樹 (1151084)


コードレビューはソフトウェア開発において重要な品質保証手法として広く用いられている. 近年ではコードレビューを管理,支援するためのレビュー管理システムが登場し,使用されるようになってきている. 従来研究では,企業でのレビュー履歴や,オープンソースソフトウェア(OSS)のメーリングリスト上のレビュー履歴などから, レビュー中に発見できた欠陥に着目し,レビュー手法による欠陥発見数の違いや,発見しやすい欠陥の特徴などを計測し,分析が行われてきた. しかし,レビュー管理システムでのレビュープロセスを対象とした分析は少なく,十分な研究が行われていない. また,レビューにより発見されることなく,通過してしまった欠陥(見逃し欠陥)に関する分析は現在までに報告されていない.

本研究ではレビュー管理システムを利用しているOSSプロジェクトを対象とした,レビュープロセスの分析を目的として2つの課題について取り組んだ.

まずはレビュー管理システムの利用履歴を用いたレビュープロセスについて調査を行った. レビュー管理ツールであるGerritから利用履歴を収集し,OSSにおけるレビュープロセスの調査を行った. この分析において開発者自らがレビューを行い,パッチを投稿した「セルフレビュー」が行われていることが観測された.

次に見逃し欠陥の抽出手法について提案を行った. レビュー管理ツールの利用履歴や版管理システムを利用した手法を提案し,分析を行った. 提案手法をOSSプロジェクトに適用した実験により,見逃し欠陥を特定できることを確認した. ロジスティック回帰分析を用いて,見逃し欠陥を予測するモデルを構築し,レビュープロセスに関するメトリクスがモデル構築に寄与していることを確認した.