ユーザの行動履歴に基づく空間装飾効果を用いた日常生活支援手法

中村 勇貴 (1151077)


本発表では,空間装飾効果を用いた日常生活支援システムを提案する.一般的に,習慣的な行動はいつ行なったかなどを意識することがなく記憶に残りにくい.この問題に対して既存研究がいくつか存在するが,文字による情報提示を用いたものが多く,ユーザのストレスを軽減するための手法や直観的に理解可能な支援情報を提供する生活支援システムについては十分に議論されていなかった.

そこで本研究では,文字による情報を用いた詳細な支援情報をユーザに提供するのではなく,直観的に理解可能な空間装飾効果を用いてヒントや気付きを与えるユーザ支援システムを提案する.スマートフォン等のモバイル端末を用い,空間装飾効果をカメラからの入力映像に拡張現実感技術によりオーバレイ表示することによって,文字による情報を用いずに情報提供を行う.

このような拡張現実感技術によりヒントや気付きを与えるユーザ支援システムを実現するにあたり,適切な場所に適切な空間装飾効果を提供しなければ,システムはユーザに正確な支援情報を提供することができない.ユーザに正確な支援情報を提供するには,(1) ユーザが見ている空間をシステムが認識できること,(2) ユーザにとって直観的な視覚効果を実現すること,の2点が課題となる.

(1)の課題を解決するため,画像マーカを用いた位置推定を行う.(2)の課題を解決するために,行動履歴を仮想的な直方体に紐付けし,各直方体ごとの優先度を計算する手法を用いる.この優先度を基に,ユーザの注意を引きつける強調効果,逆にユーザから興味をそらすような抑制効果という2種類の視覚効果を用い,これらを組み合わせて用いることにより直観的な情報を提供する手法を用いる.

本発表では,上記の提案手法について詳しく述べる.また,ユーザが掃除すべき場所を提示する掃除支援アプリケーションを想定し,(1)ユーザの理解度,(2)掃除すべき場所の決定に要した時間,(3)主観的なアンケートを用いて,文字による情報提示手法と比較する実験を行ったので,その実験結果についても報告する.