NAIST-IS-MT1151072: Hisae Naka

光ピンセットを用いたソーティング技術の開発

中 久枝 (1151072)


医療・バイオ分野で細胞や染色体、遺伝子レベルの生体試料を分析の前処理として、生体試料中から特定の個体だけを分離するためにソーティング技術が用いられている。従来のソーティング法では、分離時の物理的ダメージの問題や、ウイルスのような微小な個体の回収が困難といった問題がある。本研究では、物理的ダメージの軽減、回収可能な試料サイズの範囲拡張、および多種類の個体を一度に分別可能なソーティング法の実現を目的として、光ピンセットで対象物を三次元的にトラップして高速にソーティングする手法を提案する。ここで光ピンセットとは、集光したレーザー光を照射したときに発生する光の放射圧を用いて微細対象物を捕捉操作するマイクロマニピュレーション法である。本ソーティング法では、μTAS (Total Analysis System) 型流路を用い,多種類の試料が混在した液体試料を流して光ピンセットで高速にソーティングを行う.光ピンセットを流路で用いる際には、面内方向のトラップ力が大きいこと、広視野での操作可能であること、が求められる。これらの技術的課題を検討し、解決法を考案して、原理確認実験を行った。さらに、画像処理による自動ソーティング・システムを構築し、ソーティングに関わるパラメータの最適化を行った。また、改良した低有効NAな光ピンセットを組み込み、流速を考慮した位置補正を行うことで、より高速で誤りの少ないソーティング法になるよう改良を行った。本研究では粒子の面積を求めて比較することで粒径によって弁別するソーティングを行ったが、蛍光粒子との区別や形状の区別といった画像処理を改良すれば、様々なソーティングが可能となる。本手法によって,医学や生物学,薬学分野での分析技術の発展に貢献できることを期待する.