ウォーキング支援のためのスマートフォンを用いた歩行時心拍数推定

隅田 麻由 (1151060)


本研究では,個人の身体条件に適した負担度でのウォーキングを支援するシステムの実現を目指し, スマートフォンで利用可能な機能のみを用いた身体的負担度推定法を提案する. 近年,運動不足に起因する生活習慣病の予防・改善対策としてウォーキングが注目されており, 十分な効果を得るためにはウォーキングを長期的に継続することが求められる. しかし,負担の高い無理なウォーキングを続けた場合には,心臓や関節に負担がかかり,怪我やウォーキングに対する意欲の低下につながる場合が考えられる. またその一方で,負担が低いウォーキングを続けた場合には,十分な効果が得られない可能性がある. これより,継続性の高い効果的なウォーキングのためには,個人の身体条件に応じた適度な負担度での歩行が必須である. 歩行中の身体的負担度は心拍数から推定できるが,心拍計などの特殊デバイスの装着は手間がかかり,デバイスコストが高いため, ウォーキングの手軽さが損なわれる.提案手法では,歩行中の負担度を推定するために, 機械学習を基に,加速度や歩行速度などの歩行データから心拍数を予測する負担度モデルを構築する. 加えて,心拍数変化と関連性の高い酸素摂取量をモデルの入力に使用し,負担度の突発的な変化に対応する. ただし,酸素摂取量はスマートフォンでは直接測定できないため,新たに推定アルゴリズムを考案する. このアルゴリズムでは,歩行速度および勾配から一定時間における酸素需要量を計算し,その増減に応じて酸素摂取量の変化量を算出する. また,学習データの無い様々なユーザに対して心拍数を推定できるようにするため,年齢や運動習慣などのプロファイルを 基に作成するカテゴリごとに心拍数予測に必要なパラメタを設定し,負担度モデルを構築する.実際のウォーキングで 計測したデータに本手法を適用した結果,18人の被験者,5本の歩行ルートいずれにおいても7拍/分以内の平均誤差で心拍数の推定ができた.