安全確保速度に基づく無信号交差点形状の安全度評価法

里村 祥太 (1151053)


無信号交差点での出会い頭事故防止策のひとつとして, 道路環境の整備が挙げられる. そのためには, 我が国にある膨大な数の無信号交差点の安全度を網羅的かつ定量的に評価し, それらの中から「潜在的に危険な交差点」を抽出する方法が求められる. そこで, 本研究では, 安全確保速度(Highest Admitted Speed: HAS)に基づく無信号交差点形状の安全度評価法を提案する. HASは, ドライバの交差点通過行動を定量的に評価する指標であり, 優先側道路の死角から現れる自車に衝突する交差自動車の最低速度として定義される. 提案法では, 対象交差点の形状データから, 想定する交差自動車に対するHASを最適とする模範的な運転行動プロフィールを数理的に探索し, そのときのHAS値を交差点の安全度評価値とする. HAS値が高い交差点であるほど, 出会い頭事故が起こりにくい安全度の高い交差点形状であるといえる. 提案法と実走行データによる安全度評価法との比較を行った結果, 提案法は, 実走行データによる評価の前に, 膨大な数の交差点の中から安全度が低いと予想される交差点をプレスクリーニングする手法として有効であることがわかった. また, 形状データのみで定量的な安全度評価が可能であること, 評価の前提条件が明確であること, ドライバの特性によって評価結果が左右されないことなど, 提案法の特長を確認した. 提案法は交差点形状データのみで潜在的な危険性を評価できるため, 道路環境の整備はもとより, カーナビゲーションシステムのルート案内やヒヤリ地図の作成など, 様々な出会い頭事故対策への応用が期待される.