大規模災害時の安否確認を目的とした3G通信可能エリアへのDTNベースメッセージ中継法

小山 由 (1151049)


大規模災害が発生すると,基地局の破損や電力の供給停止によりセルラー通信 (以後,3G 通信と呼ぶ)が利用不可能になる可能性がある.通信機能が断絶する と被災地内の情報収集が困難となり,対策の遅れにも繋がる.また一方で,近年 Social Networking Service (以後,SNS) の利用者の増加が著しく,東日本大震災 においても,Twitter 等の SNS が情報収集や安否確認に広く利用されていたこと が分かっている.本研究では,大規模災害により 3G 通信が利用不可能になったエ リアでの情報の収集および発信を可能にするため,SNS に投稿しようとした安否 情報をメッセージデータとして保持し,DTN (Disruption-Tolerant Networking) によるユーザ同士のすれ違い通信によって 3G 通信が利用可能なエリア (以後,通 信可能エリア) までメッセージを中継し SNS へ投稿するとともに,投稿されたメッ セージに対する返信メッセージを通信不可能エリアにいる投稿元ユーザへ中継す ることを可能にするシステムを提案する.本システムにおいて適切なメッセージ 中継を実現する上での課題は,安否情報メッセージあるいは返信メッセージを適 切な宛先 (通信可能エリアまたは指定ユーザ) に出来るだけ短い時間で配送するこ とである.この課題を解決するため,提案システムでは各ユーザの 3G 通信状況 と時刻を含めた移動履歴に加え,他ユーザ端末との遭遇履歴を記録し,経路表を 作成する.この経路表を利用し,3G 通信可能エリアおよび特定ユーザにより短 い時間で到達する可能性の高いユーザへメッセージを中継し,効率的なメッセージ中継を実現する.提案するメッセージ法を評価するため,現実的なマップおよ びモビリティモデルを用いた計算機シミュレーションを行い,メッセージ到達率, 到達遅延時間などに関してエピデミックルーティングと比較を行った.結果,提 案手法は,通信可能エリアと通信不可能エリアのユーザへの SNS メッセージ中継 において,それぞれ到達率で約 80%,70%,遅延時間で約 3200 秒,3800 秒と,エ ピデミックルーティングに匹敵する性能を達成できることが分かった.また,そ の際に交換された総メッセージ数は,エピデミックルーティングに比べ,それぞ れ約 30%,50%少なく,提案手法の有用性を確認することが出来た.