NAIST-IS-MT1151045: Kosuke Kurebayashi

特徴量空間に基づく神経細胞のボリューム可視化法の開発

紅林 広亮 (1151045)


近年, 顕微鏡の撮像技術の向上により, 生体組織の高精細三次元画像が取得可能となった. 特に, 二光子顕微鏡は, 生体組織を生きたまま低侵襲で撮像する事ができるため, 神経細胞の観察に不可欠なツールとなっている. 神経科学では, 神経細胞の形態と脳機能は深く関連があると考えられており, マウスを用いた神経細胞の観察が積極的に行なわれている. しかしながら, 二光子顕微鏡で撮像された大規模なボリュームデータから神経細胞を効果的に探索・可視化する手法は未だ達成されていない.

ボリュームデータに含まれる内部構造を探索するために, ボリュームレンダリング技術を用いた可視化が広く利用されている. ボリュームデータの可視化結果は, ボクセルの持つスカラ値を色(RGB値)と不透明度(Alpha値)に変換する伝達関数に依存する. そのため, 伝達関数は, ボリューム可視化分野における最も重要な研究の一つとして注目されている. しかし, ボリューム可視化技術の研究の多くがCTやMRI等の医用機器によって撮像された医用画像を対象としており, これまで二光子顕微鏡画像への応用例はない.

本研究では, ボリューム可視化技術を用いて, 二光子顕微鏡画像内に存在する複数の神経細胞を効果的に可視化することを目的とし, 二光子顕微鏡画像から得られる特徴量空間に基づく可視化法を提案する. 神経細胞群の効果的な可視化を達成するために, 顕微鏡画像から得られる特徴量をパラメータとする伝達関数を設計する. 加えて, 画像より算出される特徴量群から, 神経細胞群の可視化を達成する特徴量の組み合わせを検討する. また, 任意の神経細胞に着目した観察を実現するために, 神経細胞の概形を推定し, 可視化領域を着目する神経細胞のみに限定する. さらに, ユーザが可視化結果を左右する各種パラメータを対話的に変更できるシステムの実現を目指す.

本手法を, 二光子顕微鏡画像に適用した結果, 顕微鏡画像から神経細胞群が可視化され, さらに, 可視化領域を限定することにより顕微鏡画像内の個々の神経細胞の概形が可視化されることを確認した. また, 提案手法を用いることで, 神経細胞群の手動抽出処理を支援できる可能性が示唆された.