広大なインタラクティブディスプレイ環境のウィンドウ操作インタフェース設計

久保 和樹 (1151044)


広大なインタラクティブディスプレイ環境とは,情報表示領域が両手を伸ばした状態よりもはるかに大きく,タッチ入力機能を有するディスプレイが単一または複数設置された環境である. 近年,大型のタッチディスプレイや表示機能のみの従来ディスプレイに タッチ入力機能を付加できるデバイスも登場しているため, 広大なインタラクティブディスプレイ環境を構築することも容易になってきていると考えられる.

タッチによる入力は,指やペンを使った直接的な操作によって的確に表示情報にアクセスできるだけでなく,他の利用者との共存において操作領域の干渉やポインタ表示の混同などの問題が生じ難いという特徴を持つ.その一方で,身体的な制約があるため,従来の単純なGUI上での操作では情報表示領域の広さによっては隅々まで利用するのに不向きである. しかしながら,立ち位置を変えずに散在する情報に容易にアクセスできるようになれば,ディスプレイに近接しながらも大画面を効率良く利用し,さらには複数ユーザ間での円滑なコミュニケーションの実現に貢献できると考えられる.

そこで本研究では,広大なディスプレイ環境においても大きな移動や動作をせずに ディスプレイ内に散在するウィンドウを操作できるインタフェースの設計指針を見出す. 特に主な操作としてウィンドウの選択,移動,サイズ変更に焦点を当て,3種のウィンドウ操作インタフェースを提案した. そして,広大なインタラクティブディスプレイ環境での操作状況を想定し, それぞれに対する各種インタフェースの有効性を被験者実験を行った. その結果,カーソル式インタフェースは全ての状況で縮小図式インタフェースとリスト式インタフェースより低い評価を示す結果となり,ウィンドウの重なり度合いが大きくなるとリスト式インタフェースが縮小図式インタフェースと同等の評価になったが,総合的に縮小図式インタフェースが広大なインタラクティブディスプレイ環境におけるインタフェースとして高く評価された.