無線LAN環境を対象とした仮想化ネットワークインターフェースを用いたトリガ駆動型の動的負荷分散方式

河田 真宏 (1151042)


本研究では,無線LANにおいて,仮想化された無線ネットワークインターフェースを用いることで,ハンドオーバによるオーバヘッドを可能な限り小さくし,トラヒックの状況に対して動的にアソシエーションを変更し適応させる動的負荷分散方式を提案する.大規模な無線LAN網では,複数のアクセスポイントを発見できる場所が多く存在する.このような場所において,受信電力強度の高いアクセスポイントに接続しようとする従来のアプローチでは,アクセスポイント間で負荷に偏りが生じる可能性がある.この問題に対処するために,いくつかの端末とアクセスポイント間のアソシエーションを変更することによって,負荷分散を実現しようとするアクセスポイント選択方式が提案されている.しかしながら,端末は,ハンドオーバ中は全く通信できないため,頻繁な端末とアクセスポイント間のアソシエーションの変更は,通信品質の深刻な劣化を招く.したがって,既存方式では,アソシエーションを変更する適切なタイミングを決定することが困難である.それにも関わらず,この問題は,既存研究においても,重要な課題として取り上げられる事はなかった.本研究では,無線LANにおいて,トリガ型動的負荷分散を行なう方式を提案する.提案方式では,ハンドオーバのオーバヘッドを最小限に抑えるために,端末の無線ネットワークインタフェースの仮想化を行ない,同時に複数のアクセスポイントに接続する.このアプローチを用いて,継続的にトラヒック状況の変化をモニタリングし,その結果にもとづいて,適切なタイミングで端末とアクセスポイント間のアソシエーションを切り替える方式を提案する.提案方式の評価のため,ns-3を用いたシミュレーションを行ない,集約スループットと公平性について,RSSIを基準にAP選択を行なうレガシ方式および各APから取得する接続端末数とRSSIから期待できるスループットを求めて,その値が最大となるAPを選択するMLT方式と比較した.結果,提案方式は集約スループットにおいてどの方式よりも高い性能を示し,とりわけレガシ方式と比べると,集約スループットは約59%増加した.Jain's Fairness Indexにおいては,レガシ方式と比べ約28%増加した.また,レガシ端末が混在する環境下でも,高い性能を発揮した.