拡張現実感における水面下仮想舞台重畳提示方法の検討
片山博士 (1151035)
実環境に仮想物体を重畳表示することで情報を付加する拡張現実感(AR)技術は,作業支援,教育支援,エンターテイメント分野への応用が期待されている.本発表では,このAR技術を,水を張った水槽中にバーチャルな魚を提示するARアクアリウムシステムに応用することを検討する.このようなシステムで,ARを実現するためには,実環境と仮想環境の幾何学的整合性のみでなく,水中を覗きこむ際に生じる,光の屈折,水面形状の変形による物体の見かけの変化,水面での光の反射や映り込み,などの現象を考慮しなくてはならない.これらの現象を再現するには,水面の形状計測,光源環境の計測,水面および水中での光の反射・屈折を考慮した仮想物体のレンダリングが必要であり,これら全てをリアルタイムで再現することは困難であるという問題がある.
そこで,本発表では,比較的計算コストの低い,光の屈折,周囲環境の水面への映り込み,水面での光の反射のみを再現することで,ARアクアリウムを実現する手法を提案する.提案システムでは,計測が困難な水面形状の計測については行わず,仮想的に生成した水面形状を利用することで光の屈折・反射などを再現する.提案システムによって再現される光の屈折・反射などは,実際の物理現象とは異なるが,AR画像の提示において水槽中の仮想物体のみでなく水面についても合成表示することで,AR画像を違和感なく鑑賞することを実現する.提案手法の有効性を検証するためにARアクアリウムシステムを試作し,実環境との整合性を持たない水中仮想物体へ対する違和感など,提案システムの使用感ついてユーザスタディを行った.