日本語文による ERP を用いたミスマッチ分析

小田垣 佑(1151032)


無駄なく効率のよい情報伝達を行う支援が求められている.文中における誤り単 語から感じられる違和感については様々な研究が始まっている.特に,文中の誤り の意味に関する違和感を感じた際に事象関連電位 (ERP: event-related potential) の一種である N400 成分が検出される .

先攻研究では,オランダ語文中の 2 種類の誤り単語に対するミスマッチを ERP を用いて検出されている.世界知識に対する誤り (World Knowledge Violation) と意味に対する誤り (Semantic Violation) に対して N400 が観測されることが報 告されている .世界知識に対する誤り単語とは,文脈上自己のもつ知識に対し て提示された情報が誤っている単語を指し,意味誤りは文中において文法的には 誤りではないが意味的に明らかな誤りがある単語を指す. 日本語においては,この2種類の誤り単語に対する ERP 研究が行われていな いため,日本語においても言葉の意味に対するミスマッチが N400 を観測するこ とが必要と考え,日本語で同じパラダイムを用いて実験を行った.実験では,意 味に対するミスマッチを検出することを目的として日本人に合わせた文を用意し, 先攻研究と同様に 2 種類の日本語文中の誤単語に対する ERP を観測した.その 結果,日本語においても N400 成分は検出され,2 種類の誤り単語による違和感 は日本語においても N400 成分を観測することで検出が可能であるといえる. 次に,同じ文を繰り返し見せることで N400 がどのように減衰していくかを調 べるために,繰り返し 20 回 10 種類の各カテゴリの文を見せ N400 の変化を測った.同じ刺激を繰り返し提示することで,回数を経るごとに N400 の振幅が減衰 する過程で一定回数の繰り返し提示までは N400 が検出されるという仮説を立て, 実験を行った.結果として,同じ文を 2 回以上見せた場合,被験者に慣れが生じ ることによって N400 は消失し違和感がなくなってしまう現象が確認された.意 味に対するミスマッチは一度限りであり,同じ刺激によるミスマッチは起こらな いことが明らかとなった.

さらに,会話中の誤り単語からの違和感検知に向けて聴覚刺激と視覚刺激での 結果比較のため初めの実験と同一の文を用いて聴覚刺激にて実験を行った.その 結果,視覚刺激と同様に N400 成分が観測された.しかし,聴覚を用いた実験で は Semantic Violation 単語において,N400 が観測された.World Knowledge 単 語においては比較的遅い時間帯に陰性方向への電位のシフトが現れ,異なる単語 において反応の違いがはっきりと現れた.音声においても,N400 が観測された ことにより,違和感の検知が可能であることが確認された.これにより,音声刺 激においても誤り単語による違和感検知が可能であることが示された.

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