把持物体はColumbia Grasp Databaseから抽出した把持物体セット1とプリミティブな物体で構成される把持物体セット2の2セットを用意した.把持物体セット1は接触面が複雑になるため,シミュレーションに時間がかかることがわかった.一方で把持物体セット2は単純な接触面であるため,シミュレーションに必要な時間がより短かった.どちらの把持物体セットを把持しても結果に大きな差が生じなかったことから,計算時間的に有利な把持物体セット2をフレームワークの把持物体として採用するのが良いといえる.
関節トルクを考慮しない場合,ロボットハンドの指の長さが長いほど評価スコアが増加する傾向があるため,発揮できるトルクに限界がある現実にそぐえないという問題がある.そこで,関節トルクを評価式にコストとして織り込むことで,より現実的なシミュレーションを実現することができた.
提案したロボットハンドの最適設計フレームワークにより得られた設計変数に基づいてロボットハンドを製作した.そして,そのロボットハンドを双腕型作業支援ロボットNEXTAGEの手先に取り付け,生活空間中にあった物体を把持する実験を行った.8つの物体に対してそれぞれ10回ずつ試行したが,すべての物体で少なくとも一度は把持することができた.ただし,じょうろやスコップのような長手方向に大きい物体は成功率が低かった.
本研究を通して,最適設計のためのフレームワークを構築することができ,さらにそれを実際に使うことで,その有用性を証明することができた.