NIRSを用いた基礎的なドラム演奏の熟達に伴う皮質活動変化の調査
上田 公介 (1151017)
スポーツや音楽では,熟達者と非熟達者との間にパフォーマンスの差がある.パフォーマンス向上の要因は一般的に言語化が難しく非熟達者に伝えることが困難である.記憶や運動計画など複数の情報を処理する脳の活動から,非熟達者における熟達のプロセスが明らかになれば,効率的な指導方法につながることが期待される.本研究では非熟達者が動作に熟達するにしたがって非熟達者の脳活動に近づいていくという仮説を検証した.動作には四肢を用いた運動であるドラム演奏を用い,脳活動計測手法として近赤外分光法を用いた.5名の非熟達者に3日間に渡って2つの課題を遂行させ,課題遂行中の脳活動を計測した.課題は非熟達者の熟達者の双方にとって遂行が容易な一小節のドラムパターン(易課題)と熟達者にとっては遂行が容易であるが非熟達者にとって遂行が容易でない一小節のドラムパターン(難課題)であった.難課題の信号から易課題の信号を減算し,課題の難度が脳へ与えた負荷を表す指標とした.グループ解析の結果,複数の脳部位において,ドラム演奏の熟達に伴って課題間の脳活動差が有意に減少することがわかった.非熟達者が動作に熟達するにしたがって脳にかかる負荷が減少していくという仮説は示されたといえる.