インステップキック運動における蹴り脚の動的可操作性解析
泉直克(1151011)
現在TVゲームのヒューマノイドキャラクターの運動生成は,多くの場合モーションキャプチャデータの再生により行われているが,力学を考慮した処理も行われるようになってきている.今後はリアリティ追求の面から,能動的な運動生成に発展していくことが考えられる.
一方,学術的な研究では既に人間の歩行運動や腕の到達運動に関して動力学シミュレーションによる能動的な運動生成が行われており,運動生成には運動を決定する最適規範が利用されていることが多い.しかし,他の運動に関して言えば研究は少なく,特にキック運動の最適規範の研究は知る限り無いことから,本研究ではサッカーのインステップキック運動を対象とした解析を行い,動力学シミュレーションにおける運動生成に利用できる規範を見出すことを目的とする.
インステップキックの評価指標として,加速度の出し易さを表す動的可操作性楕円体に基づき,インステップの希望加速方向を考慮したTask Compatibilityと,同じく動的可操作性楕円体に基づき,インステップの希望加速方向,非希望加速方向を考慮した,加速度の精度を表す動的作業方向動作精度(DAIT)を算出し,両者を比較した.解析の結果から,Task CompatibilityよりDAITの方がボールインパクト付近に関し,インステップキックを説明するのに適していることを示した.
また,この結果から,ボールインパクト付近で Task Compatibilityと DAITがインステップの速度を保った上で高まると考えられ,それを実証するために冗長関節の運動生成シミュレーションを行ったが,シミュレーションによって生成された運動が人間の運動に近付くという観点での有効性を示すことはできなかった.