$\eta_T$ペアリングの並列実装と基底変換による拡大体上の乗算コストの削減

石井将大 (1151009)


ペアリングは,楕円曲線上の点の集合,或いは超楕円曲線のJacobian上の群構造を保つ双線形写像であり,その数学的性質を用いて,IDベース暗号やブロードキャスト暗号, ひいては関数型暗号等に応用されている.一般的に,ペアリングに係る演算は,楕円曲線上の演算等に比べ複雑で,種数の高い代数曲線を選択すると計算コストはより高くなる. 様々なペアリングを用いたセキュリティレベルの高い暗号の構成のために,ペアリングの高速化の研究は必要である.

本研究では,ペアリングの並列実装に関して,実装実験を通してペアリングパラメタである超楕円曲線や,その曲線の定義体,或いはペアリングの計算に必要な拡大体の構成等, 高速に並列実装出来るパラメタの決定を目的とし,実際にある$\eta_T$ペアリングの並列実装に適したパラメタを示した.更に,並列に効率的な乗算が行える拡大体の構成への基底変換を 適用することにより,$\eta_T$ペアリングの高速な並列実装を提案した.又,その基底変換について,高速な変換行列の求解アリゴリズムを提案し変換コストについても考察を与えた.

本発表においては,$\eta_T$ペアリングの並列実装に関して,特に提案手法である拡大体の乗算の並列化と,$\eta_T$ペアリングの並列化に適した構成を具体的に示す.又,その並列実装 のシミュレーション結果を示し,拡大体の基底変換により高速な$\eta_T$ペアリングの並列実装が行えることを示す.更に,基底変換の探索について,normal basisを用いた提案手法と そのシミュレーション結果を示す.