直感発生時における直感に関する情報の時空間遷移

近藤良 (1051142)


ヒトは問題を解く際に,少なくとも2通りの解決方法を有していることが知られている.直感による解決と,非直感による解決である.直感とはヒトに備わっている脳機能で,明示的な解法を伴わず,意図せずに問題解決に至ることを可能にする.脳科学や心理学の分野で直感についての研究がなされており,前帯状皮質や前側頭回が直感発生時に活動するとされてきた.

しかし,従来研究では直感発生時の脳活動と非直感発生時の脳活動とを別々に解釈しているため,直感発生時の脳活動と非直感発生時の脳活動がどれほど異なるかは解析されていない.ゆえに,脳の各部位の直感発生への関与の程度を知ることができておらず,時系列に沿った直感発生のメカニズムを解明することができなかった.

本研究では,直感発生のメカニズムを解明するために,直感解法と非直感解法の両方の解法で解くことができるアナグラムテストを実験参加者に課すと同時に脳波を計測した.計測した脳波から直感・非直感という二値判別を行うデコーダを作成することにより,直感発生時の脳活動と非直感発生時の脳活動の差を解析した.作成したデコーダの判別性能を直感に関する情報の量と解釈して各脳部位間でその量を比較することで,各脳部位が持つ直感に関する情報の量が時間経過と共に変化していく様子を示すことができた.その結果,P4が直感発生の起点であり,その後P4近傍の部位に直感に関連する情報が拡散していく過程が明らかになった.加えて,特にガンマ波に直感に関する情報が多く含まれることがわかった.