コンテンツ人気遷移に追従する地理情報を用いた P2P クエリ処理最適化手法の提案と評価

和田 倫和 (1051131)


センサデバイスの普及に伴い,広域に存在するセンサデータを共有する分散システムが実現しつつある. この分散システムを構築する基盤として,自立分散に強みを持つ Peer-to-Peer が注目がされている.多くの Peer-to-Peer では Distributed Hash Table を用いてコンテンツを各ノードで均等に分散保持し,ユーザからのコンテンツ取得要求であるクエリの分散を実現する. しかしセンサデータのようなコンテンツでは突発的なイベント (天候の変動など) により,ユーザの関心が特定のコンテンツに向かうため,コンテンツが分散保持されている環境下でもクエリの集中が発生する恐れがある.更にコンテンツの人気遷移により,複製配置が負荷分散の効果を発揮する前に他コンテンツへクエリ集中が遷移する可能性がある. 本研究では,地理情報に基づき過負荷状態に陥ったノードの近傍ノード群に効率的に複製配置処理を行う手法を提案する. 過負荷時にアクセスが予測されるノード群に集中的に複製配置を行うことで,配置された複製が効果的に負荷分散の役割を果たし,負荷分散に要する時間を削減出来る.提案手法の有効性を示すためにエミュレーションを用いて評価実験を行った.その結果,既存手法を改良した動的な Path Replication と比べ,負荷分散達成までに要する時間が約 3 倍短 縮され,人気遷移に追従した高速な複製配置が実現されることを明らかにした.