不快音圧レベル推定のための純音ペア刺激に対する誘発電位の特徴量分析
藤居宏平 (1051092)
補聴器の音量調整の際に実施される許容出来る音の上限値 (UCL)を求める検査が不十分であり,補聴器の調整がうまく行われていない.
その原因としては,補聴器の所有者には高齢者が多く,主観報告でのUCL検査の信頼度の低さが挙げられる.
そこで本研究では,ペア刺激 (300msの間隔で同じ周波数・音圧の純音を2音連続呈示する刺激)に対する事象関連電位 (AEP:Auditory Evoked Potential)を用いて,
主観報告に頼らないUCL推定の方法における有効な特徴量,その特徴量におけるUCL推定に有効な区間を探索した.
特徴量には,電位とウェーブレット係数を用いた.識別器は呈示した音の周波数ごとに作成し,線形Support Vector Machine (SVM)とフィッシャーの線形判別 (LDA)により学習を行った.
解析の結果,特徴量にウェーブレット係数における2音目呈示から100ms以降で4Hz以上の2つの区間,識別法にLDAを用いた場合に,
主観UCLと推定UCLとの誤差が最小2.5dBと主観UCLの最小単位である5.0dBを下回ったので,十分な推定精度が得られたと言える.