頭部用高解像度SPECT装置の開発と評価

富永 貴則 (1051072)


放射性同位元素を用いるPET(Positron Emission Tomography)やSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)といった核医学診断装置は血流や代謝,神経活動などの生理機能を画像化することができる.SPECT装置はPET装置に比べて安価であるため広く普及しているが,解像度が10 mm程度と低く,解像度の改善が期待されている.我々のグループでは25 cm× 15 cmのNaIシンチレータにマルチアノード光電子増倍管15個を結合した頭部用検出器を開発し,これとフルデジタル検出位置演算回路を組み合わせることで高解像度撮像を可能とする実用的な頭部用高解像度 SPECT 装置の完成を目指している.高解像度化による感度低下の影響は,SN改善効果のあるコリメータ開口補正付き画像再構成法を実装することで回避する. 本研究では,開発の第一段階としてアナログ位置演算回路を頭部用検出器に組み合わせたSPECT装置を試作,コリメータも製作した上で装置の性能評価を行い,理論どおりに臨床SPECT装置よりも高い解像度が得られることを確認する.一連のファントム実験によって装置性能評価が行われた.検出器の感度,空間分解能,感度均一性,およびシステム解像度が評価された.さらに,SPECT装置として,複数線線源ファントムによる空間解像度,濃度一様円柱ファントムによる感度一様性,および3D 脳ファントムによる視覚的画像精度が再構成画像上で評価された. 実験の結果,検出器の解像度およびシステム解像度は理論どおりに臨床用検出器より少し高かった.SPECT画像においては,空間分解能は7.5 mm (FWHM)を達成し,円柱ファントムでも高い均一性が確認できた.3D脳ファントム画像では,画像再構成法の効果によってSNの高い画像が得られることができた. 以上の結果より,開発中の高解像度検出器を搭載したSPECT装置は現段階で理論どおりの性能が得られており,コリメータ開口補正付き画像再構成法の効果も確認できた.フルデジタル位置演算回路の導入によって最終目標であるPETと同程度の5 mm以下の解像度が期待される.