力学過程を介した細胞形態制御の定量数理モデル

田中 大河 (1051064)


脳の学習機能は神経回路の変化,つまりシナプス可塑性と構造可塑性(形態変化) によって実現されることが知られている.このうち,構造可塑性については未だに不明な点が多く,脳機能の解明のため原理の解明が求められている.また神経細胞を含むほとんどの細胞の形態変化は,一般にRhoファミリー低分子量Gタンパク質と呼ばれる生体分子群によって制御されていることが知られている.しかし,これらの分子がどういう形態変化の効果をもたらすかについては,各分子活性に対する生化学的な知見と実際の形態変化の観察の間で論理的な整合性がない.その結果,細胞の形態形成のメカニズムは解明に至っていない.本研究では,細胞の形態変化に必要な力学過程を考慮することで,既存の知見を包括的に説明するモデルを提案した.そしてそれに基づく数理モデルを構築し,実験データからパラメータを求めることで定量モデルを構築した.本研究で作成した定量数理モデルは,実験データを定量的によく説明が可能であり,分子活性と形態変化の関係の一端が初めて説明可能となった.