3次元ボリュームデータと内視鏡画像の混合ボリューム可視化による拡張内視鏡像の生成
佐藤省三 (1051051)
近年,腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎外科手術において, 内視鏡下脊椎後方手術(Microendoscopic Discectomy)等の内視鏡手術が試みられるようになってきた.この術式は内視鏡を用いるため従来に比べ低侵襲な治療が可能であり,患者の負担が小さいことから,今後のさらなる普及が期待されている.内視鏡下脊椎後方手術は術野が狭く術者に高度な技術が求められるため手術ナビゲーションシステムを用いた手術が注目されている.術中に用いられている手術ナビゲーションシステムは術具の3次元位置の提示にのみ使用されているが,医師からは術具の3次元位置から観測した内視鏡レンズの特性を反映したCTボリューム像の提示が望まれており,現在開発が進められている.しかし,考案されているシステムでは術中の内視鏡画像とCTボリュームデータから生成した仮想内視鏡画像を半透明にして重畳可視化させるか,横に並べて表示させる方法が取られており,有効な可視化方法が確立されていない.
そこで本研究は,内視鏡下脊椎後方手術において,神経や切削予定箇所のように手術中に重要となる情報を内視鏡画像とレンダリング像に含まれる構造物の相互の位置関係を正しく提示できる拡張内視鏡像の生成を目的とする.本論文では,患者の体内を可視化するために3次元ボリューム像に内視鏡画像を挿入し,視点に対して内視鏡画像から手前側の領域,内視鏡画像,内視鏡画像よりも奥側の領域の3つの領域に対して異なるレンダリングを行う混合ボリューム可視化を提案する.
カメラ写真と患者のCTボリュームデータを用いて 提案手法を適用した結果,軟組織を想定した砂に埋没した腰椎や神経を位置関係が正しい状態で可視化できることを確認した.今後,提案手法のさらなる改良により凹凸のあるリアルタイムな術野映像への適用されることにより内視鏡下脊椎後方手術がより安全に行われる環境が整うことを期待する.