推定可能な自由度の変化にロバストなモデルベーストラッキング
熊谷 謙造 (1051041)
画像中の物体の3次元位置・姿勢を推定する技術はコンピュータビジョン,ロボ ティクス,拡張現実感などの分野において広く用いられ,現在に至るまでに様々 な手法が提案されている.中でも対象物体の幾何形状が既知の場合はモデルベー ストラッキングと呼ばれるアプローチが一般に用いられる.この手法は,事前に 作成した追跡対象の 3 次元モデルが入力画像上に映る対象にあてはまるように位 置あわせすることで,対象物体の位置・姿勢推定を行う.モデルベーストラッキ ングは対象物体の形状によって推定可能な自由度が減少する場合がある.推定可 能な自由度が減少した場合,(1) 推定値が一意に定まらないために不安定な状態 になる.(2) 推定不可能になった自由度の復帰が困難になる,という問題がある. 従来ではこれらの問題が生じた場合には再度初期化を行わなければ,推定不可能 になった位置・姿勢の推定を再開させる事ができなかった.本研究では,この問 題に対して,推定可能な自由度を算出することで現在のトラッキング状態を観測 し推定可能な自由度が減少した場合には,零空間を探索することで減少した自由 度の位置・姿勢推定処理への復帰を実現する.実験では,シミュレーション環境 において本研究の有効性を検証し,実環境において復帰処理の確認を行った.