ゲーム理論を用いた複数楕円体による最大出力許容集合の近似

喜多 功次 (1051038)


現実の制御システムには, 可動範囲の制限やアクチュエータの性能限界等, 様々な拘束条件が存在する. 拘束条件が満たされない場合, 制御性能の低下に加えて, システムの暴走や故障が発生する可能性がある. これを防ぐために, 拘束条件を考慮した制御手法の研究が行われている. これらの制御手法の多くは, 拘束条件の達成を判断するための必要十分条件として, 最大出力許容集合を用いる. この集合に現時点でのシステムの状態量が含まれれば, 拘束条件を破らずに収束することが保証される. しかし, この集合を得るには多くの計算時間が必要となる. そのため, リアルタイムで集合計算が求められるような未知参照値をもつシステムに対しては, この集合の導入が困難である. 従来法では, 最大出力許容集合を複数の楕円体で近似することにより, リアルタイム計算を可能にするが, 近似精度に関しては陽に考慮されていない.

そこで本稿では, 最大出力許容集合の近似精度を向上させるゲーム理論的手法を提案する. 提案法では, ゲームを行うプレイヤーとして楕円体を設定し, ゲーム 理論的学習アルゴリズムを用いて局所解への収束を実現する. 効果的に配置された楕円体を用いることで, 従来手法よりも広い動作範囲での拘束条件の達成を保証することが可能となる.