拮抗筋群の活動に基く腕の運動解析

伊藤隆洋 (1051008)


人は,関節数より多くの筋肉を持っており,拮抗関係にある筋群を使って関節剛性を制御している. ここで剛性とは関節のバネ剛性を表す指標であり,これまで様々な剛性推定に基づく運動解析が行われている. 別の視点で考えると,腕の姿勢が主動筋と拮抗筋の釣り合いによって決定されると見なすことが出来る. このことから,運動計画において筋力の釣り合う姿勢である平衡位置を徐々に移動させることで運動を制御していると考える平衡軌道制御仮説がある.

本論文では,腕を対象として表面筋電位と姿勢を用いて,拮抗筋の活動を考慮した剛性と平衡位置の推定手法を提案する. 表面筋電位と姿勢の計測結果からシミュレーションモデルを用いて発揮筋力を計算し,拮抗筋群の発揮を考慮した剛性と平衡位置を推定する. 水平面内における円軌道を描く運動を対象として,運動中の剛性と平衡位置を推定する実験を行う. 実験結果より提案手法により得られる剛性と平衡点について議論し,屈曲・進展の筋群がどのように作用しているかを示す.