スペクトルのシフト不変性と音響経路推定に基づく自動採譜

池内 亮太 (1051005)


自動採譜とは,音楽音響信号から自動で楽譜を作成することであり,音楽情報処理における重要な課題の一つである.音楽情報処理では,楽器からマイクまでの音響経路の特性が性能に大きく影響を与えることが実験的に示されており,自動採譜システムをつくる際にもこの特性を考慮することが重要であるが,いままでは考慮されてこなかった.

本研究では,音響経路を考慮した楽器音の生成モデルを立て,それに基づく自動採譜法を提案する.さらに,同じ楽器のスペクトルであれば音高が異なってもスペクトルの形状は同じとしたスペクトルのシフト不変性を仮定することで,推定すべきパラメータを減らし,安定性を得た.提案手法は非負値行列因子分解(NMF)として定式化され,楽譜情報,各音高のスペクトル,および音響経路の周波数応答を同時推定する.複数楽器で演奏された音源を用いて従来モデルとの比較実験を行った結果,提案モデルの優位性が示された.