Z偏光ビームを用いたナノ粒子のレーザートラップ
東 真也 (1051002)
近年, 計測装置の高性能化に伴ってバイオサイエンス分野では研究対象物体の微細化が進んでいる. その結果細胞一つ一つの計測だけでなくタンパク質やDNAといった細胞内に存在する微小な物質の動態や特性について計測することが可能になった. それに伴ってナノメートルオーダーの物体を扱う技術が求められている. 光ピンセットは光の放射圧を用いて顕微鏡下の微小な物体を対物レンズの焦点スポットに捕まえて自由に動かす技術である. 個々の対象物体を顕微鏡観察しながら操作することが可能なため, 生体細胞の操作に広く用いられている. しかし, ナノメートルサイズの粒子ではブラウン運動の影響が大きくなるため, 従来の光ピンセット手法では安定して捕捉するのは困難であった. 近年, 特殊な偏光状態を持つレーザー光源を用いて粒子を捕捉する光ピンセット装置が報告された. これはレーザーの集光スポットにおける光強度プロファイルを変化させることで光ピンセットの捕捉効率を向上させる手法である. この手法では入射する総エネルギーを変化させることなく, より微小な粒子を捕捉することを可能にする. そこで本論文ではレーザーの偏光方向が軸対称なレーザー光を集光したビーム(Z 偏光) を用いて粒子を捕捉するZ 偏光光ピンセット装置を開発し, その性能について検証実験を行った. 検証には蛍光相関分光法を用いて検出した対象粒子の焦点スポット内滞在時間を計測し, 利用した. 粒子滞在時間が長くなれば, 光ピンセットによる捕捉力が強く働いていることを意味する. 直径28 nm のナノ粒子を用いた場合の実験結果から, Z 偏光光ピンセット装置は従来法である直線偏光を用いた光ピンセット装置と比較して捕捉効率が向上することを確認した.