中空透明球体を利用した近接点光源の位置推定
青砥 隆仁 (1051001)
光源位置を変えながら撮影した画像群から物体形状を推定する照度差ステレオは, 詳細な形状情報を復元できることから, デジタルアーカイブや物体認識などへの応用が期待される.
中でも, 近接光源を用いた照度差ステレオ法は法線方向の復元精度が高いという特長を持つため, 近年盛んに研究がされている.
近接光源を用いた照度差ステレオによる物体形状の計測では, 光源位置の推定が重要な課題となる.
従来, 近接光源位置の推定手法として, 複数の参照物体から観測される反射光や単一の参照物体によって生じる影を用いる方法などが提案されてきた.
しかし, 前者は参照物体間の位置関係を事前にキャリブレーションする必要があり,
後者には推定すべきパラメータが多く, 光源位置を安定に推定することが難しいという問題がある.
これらの問題に対し, 本研究では, 実環境の光源分布を計測する方法として, 中空透明球体を用いた近接光源位置の推定手法を提案する.
本手法は,
(1)単一の参照物体のみによる推定を行うため参照物体間の幾何学的キャリブレーションが不要である,
(2)光源, カメラの光学中心, および透明球の中心の3点で構成されるエピポーラ平面上に必ず反射光が存在するため, 画像上で反射光と球中心が直線上に観測でき反射光の対応付けが容易である,
(3)画像上で反射光の再投影誤差を最小化することで光源位置を安定に推定できる, という特長を持つ.
実験では,
提案手法の有効性を確認するため, 仮想環境および実シーンにおいて近接光源位置の推定精度を定量的に評価した.
また, 推定された近接光源位置を用いた照度差ステレオ法による法線方向の復元結果を示し, 近接光源を用いた照度差ステレオに必要な光源位置の推定精度について検証した.