薬剤選択の根拠には薬剤の対象疾患に対する有効性と副作用等のリスクの二軸があるが、今回はシステムの構築へ向けたアプローチとして、リスク評価の点に重きを置いた。 本システムでは、候補薬剤を対象患者に投与する際に生じるリスクを、患者の基礎疾患によるものと、基礎疾患によらず薬剤固有のものとに分けて考える。 基礎疾患によって生じるリスクについては、患者ごとに異なる基礎疾患や、薬剤ごとに異なる禁忌や慎重投与といった情報を数値化し、これを掛け合わせることで算出する。 薬剤固有のリスクについては、薬剤ごとの治験データや副作用報告などの情報を元に、生じた副作用とその頻度に関する情報を収集して求めた。 尚、各リスクの重み付けについては医師から回答を得、薬剤の添付文書等の参考文献を元に禁忌や慎重投与の情報を集め、科学的根拠に基づいた評価を行った。
本論文の最後には上記提案手法の有用性を確かめるため、プロトタイプとして不整脈治療に焦点を当てたモデルを作成し、テスト患者データを用いた検証試験を行った。