オーソログ関係に基づく植物遺伝子の進化の多様性
川添 麻衣 (0951149)
近年、様々な植物のゲノムプロジェクトの進行により、ゲノム情報を利用できる植物種が増えてきている。モデル植物である双子葉植物のArabidopsis thaliana (A. thaliana)は他の植物に比べるとゲノム情報だけでなく、タンパク質の機能解析や、遺伝子の発現解析などの面においても情報が豊富であり、植物の中では最も生命現象の理解が進んでいる植物である。これまで植物の比較ゲノム解析は、A. thalianaと他の植物種との直接比較にとどまっていた。しかし、植物における遺伝子の進化を考えるにはA. thalianaと他の植物種の直接比較だけではなく、全ての植物種間での比較を通した俯瞰的解析が必要であると考えられる。そこで本研究では、A. thaliana(双子葉植物)、Chlamydomonas reinhardtii(緑藻)、Physcomitrella patens(コケ)、Selaginella moellendorffii(シダ)、Oryza sativa(単子葉植物) の5種のゲノム配列を用いて遺伝子の関係性の指標であるオーソログ関係を利用した遺伝子セットの抽出を行った。抽出された遺伝子セットに対して遺伝子をノード、オーソログ関係をエッジとしたグラフを作成し、グラフの形による分類を行った。その結果、細胞周期やDNAプロセッシング、エネルギー、タンパク質合成など生命維持に関わるような機能を持った遺伝子群が5種の植物種による完全グラフにおいて多いことが明らかとなった。また、直接比較では明らかにできない進化の多様性を示唆する結果を得た。以上のことから、植物界における各遺伝子の進化を概観することができた。