テクスチャの幾何学的変換と類似パターン位置を考慮した画像修復
宮本 龍 (0951124)
画像内の不要な部分を取り除き,その欠損領域を自動的に修復する画像修復に関する研究が近年盛んに行われている.
従来,欠損領域の修復に関しては,パターン類似度SSD (Sum of Squared Differences)を用いて欠損領域全体の尤もらしさを表すエネルギー関数を定義し,それを最小化することで画像を修復する手法が提案されている.
また,明度変化を許容したパターン類似度SSDを用いることで,明度の不自然な変化を抑止する手法も提案されている.
しかし,画像内のテクスチャパターンに限りがあるため,違和感のない修復に必要なパターンが画像内に存在しないことが多い.
また,パターンの変形に比較的弱いSSDによる評価尺度を用いて画像全体に対して類似パターンの探索を行うため,計算コストが大きく,かつ不適切なパターンの対応を招き,修復画像がぼけてしまうという問題がある.
そこで,本論文ではテクスチャの明度変化だけでなく幾何学的な変換も許容したパターン類似度によるエネルギー関数を新たに定義し,画像内で近接するパターン間の位置関係を利用した効率的な探索を用いてこれを最小化することで,高品位かつ高速に欠損領域を修復する手法を提案する.
これにより,修復に必要なパターンの不足によるテクスチャの明度と幾何学的な構造の不自然な変化を抑止する.
また,画像内で近接するパターン間の位置関係を利用した探索範囲の限定により,計算コストを削減し,かつ不適切なパターンの対応付けによるぼけの発生を抑制する.
実験では,様々な画像に対して欠損領域の修復を行い,主観的評価実験により従来手法と比較することで提案手法の有効性を示す.