光・無線ネットワークにおける資源管理に関する研究

松井元輝 (0951113)


 近年,光パスネットワークを介して広域分散した計算機を利用する光グリッドと,周囲の無線環境を認知してその状況に適した通信をおこなうコグニティブ無線の研究が盛んに行われている. 光グリッドでは,計算資源と波長資源が複数のユーザによって共有利用されるため,これらの資源は効率良く利用される必要がある. 一方,コグニティブ無線では,周波数資源がユーザによって共有利用される.そのため,光グリッドと同様に,これらの資源が効率良く利用されなければならない. そこで本発表では,光グリッドとコグニティブ無線における各資源を有効利用するために,モデル予測制御を用いた資源管理方式を提案する.

 本発表ではまず,光グリッドにおける計算資源と波長資源を有効利用するために,モデル予測制御を用いた2つのの資源管理方式を提案する. 1つ目の提案方式では,光パスの設定・解放処理の動特性を考慮して伝送タスク量を決定するために,設定・解放処 理を論理命題として記述してモデル予測制御を行う. 具体的には,論理命題を含んだ制御問題を混合論理動的(MLD:Mixed Logical Dynamical) モデルとして表現し, MLD モデルに対する混合整数二次計画問題(MIQP: Mixed Integral Quadratic Programming) を解くことで伝送タスク量を決定する. 一方,2 つ目の提案方式では,設定・解放処理を表す論理命題を考慮する必要がなく,二次計画問題(QP: Quadratic programming) を解くことで 伝送タスク量を決定することができる. MIQP による提案法では,光パス設定・解放処理の動特性を考慮するため,QP による提案法よりも波長資源の有効利用が期待できる. その一方で,MIQP の計算はQP の計算よりも時間がかかるため,QP による提案法の方が高速な処理を期待できる. 両方式の性能をMatlab を用いたシミュレーションによって評価し,PID 制御を用いた方式と性能を比較する. 数値例において,モデル予測制御を用いた2つの提案法が従来方式よりも資源を有効利用できることを示す.

 次に,コグニティブ無線ネットワークにおける周波数資源を有効利用するために,PID制御とモデル予測制御それぞれを用いた2つの電力制御法を提案する. PID制御を用いた方式では,二次システムの各送信機が自身の通信品質を考慮し,PID制御によって送信電力を決定する. さらに,一次システムからの干渉電力値の情報を基に,更新アルゴリズムに従って拘束条件を決定し,実際の送信電力を決定する. モデル予測制御を用いた方式では,1つ目の提案方式と同様に更新アルゴリズムによって拘束条件を決定し,モデル予測制御によって送信電力を決定する. この方式では,拘束条件による制約を含む二次計画問題を解くことで最適な送信電力を決定する. そのため,拘束条件を考慮できないPID制御を用いた方式よりもより適切に送信電力を決定できる. 数値例において,2つの提案方式の性能をMatlab を用いたシミュレーションによって評価し,従来方式との比較から提案方式の有効性を示す.