これまでに提案された電流源推定法の多くでは空間的な拘束条件のみが用いられていた.最近ではこれらに加えて時間的な拘束条件を利用した手法が提案されており,中でも状態空間モデルを用いたアプローチは,電流源の時間的なダイナミクスを陽にモデリングできることから,重要でありかつ有望である.本発表では,我々がすでに提案している階層ベイズ法(Sato et al. 2004)に基づき,計算量的に効率のよい状態空間モデルベースの電流源推定法を提案する.提案手法においてそれぞれの電流源の時間発展は,対角の状態遷移行列でモデル化される.我々の手法を用いることにより,推定されたダイナミクスに従いかつ局所的な活動を示す電流源の再構成が可能となった.
本手法の利点は,高次元の状態空間モデルの内部状態,パラメータを同時に推定できるところにある.これは従来の状態空間モデルに基づく手法では実現できていなかった.本利点により,シミュレーション実験において正しく真の電流源を推定することが可能になり,また,実データ解析においても生理学的知見に則した活動の推定が可能となった.さらに本手法は,状態遷移行列の非対角成分まで仮定することによって,電流源推定と結合性解析を同時に行うように拡張できる可能性をもつ.