内視鏡下脊椎手術計画のための構造力学解析ソフトウェアの開発
畑 丈智 (0951092)
近年,腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎外科手術において,
内視鏡下脊椎後方手術(Microendoscopic Discectomy)等の内視鏡手術が試み
られるようになってきた.本手術は内視鏡を用いた低侵襲な治療が可能であり,
患者の負担が少なく社会復帰も早いため,今後のさらなる普及が期待されている.
腰部脊柱管狭窄症などの手術では神経を圧迫する椎間関節を部分的に切除するこ
とで除圧を行う.このとき,椎弓や関節突起は,伸展や回旋運動による脊椎の動作
を制御する重要な部位あることから,術前後で椎骨に及ぶ力の均衡が変化する.
特に腰椎においては,頸椎や胸椎と比べても比較的大きな圧力が加わるため,切削
箇所が原因となって術後に痛みが生じたり,運動時の過負荷による疲労骨折に繋が
る可能性も否定できない.このため,術後の生活において影響が出ないように配慮
した切削範囲の綿密な計画が必要となる.
しかし,現状では術前計画時に実施する切削が術後脊椎に与える影響について症例
ごとに推定すると言ったことはなされておらず,切削箇所や切削範囲は医師の経験則
に基づいて決められている.現在,有限要素解析にもとづく腰椎の応力解析も多数お
こなわれており,計算機上で様々な状況をシミュレート出来るため,臨床現場での応用
も期待されている.しかし,CTなどの医用画像をもとに医師が有限要素解析を行うに
は冗長な処理が必要であり,本来の業務を妨げる原因になると考えられる.
本研究は,内視鏡下脊椎後方手術の術前計画支援を目指し,切削手術後に日常の姿勢・運動
において患者の椎骨に生じる応力を医師が簡便に解析できるソフトウェアの開発を目的とする.
本ソフトウェアでは,従来の有限要素解析において時間を要していた前処理のステップを削減
することによってエンドユーザが力学解析を簡便に行える環境を提供する.具体的には,
マウスなどの汎用的な二次元ポインティングデバイスを用いて,三次元椎骨モデルに対する
直接入力によって任意の切削を表現可能とする.また,日常生活における伸展や回旋運動時
に生じる椎骨へ負荷を表現した幾つかの境界条件モデルを構築し,少ないパラメータ設定で椎骨
に生じる応力を解析し可視化する.