すれ違い通信によるスマートフォン向け省電力協調ダウンロード手法

高松悠 (0951077)


近年,スマートフォンが急速に普及し,スマートフォンから携帯電話網を介し大容量コンテンツをダウンロードすることが一般的になりつつある. しかし,多数のユーザが同時に携帯電話網から大容量コンテンツをダウンロードすると携帯電話網の通信帯域を圧迫する.

本発表では,大容量ファイルをダウンロードする際の携帯電話網の通信帯域節約を目的に,同じコンテンツを要求するユーザ端末間でコンテンツの一部(断片)を近距離無線通信で送受信する省電力な協調ダウンロード手法について発表する. 携帯電話網の通信帯域を節約するために,より多くの断片を近距離無線通信により他の端末から取得する必要がある. 提案手法では,より多くの断片を他の端末から取得できるようにするため,欲しい断片を持っている他の端末が近距離無線の通信範囲に入る時刻(遭遇時刻)を予測し,効率よく断片の取得を行う. 遭遇時刻を予測するために,各端末がサーバに位置情報および所有断片情報などを定期的に通知し,サーバは各端末とその要求断片を持つ他の端末との遭遇確率と時刻を予測し,断片を効率よく取得する通信スケジュールを作成する. 更に,端末の近距離無線通信による消費電力を抑えるため,通信スケジュールに基づき,必要な時間だけ近距離無線通信デバイスを起動し,断片の取得を行う. また,提案手法では,ユーザの定めた受信期限までにコンテンツの取得を完了させるため,近距離無線通信を通じて取得できない断片は,後の他の端末との通信スケジュールも考慮し携帯電話網から計画的にダウンロードする.

提案手法を評価するために,シミュレーションによる実験を行った. 予備実験では,iPhone や ipodtouch を用いた実験を行い,端末が近距離無線や携帯電話網を使用することで消費する電力量を測定した. そして,予備実験から得られた電力消費モデルを用いたシミュレーション実験を行った. その結果,端末数が1000台とユーザの密度が高い場合,近距離無線デバイスを常に起動し断片を集める方式よりも約15%多くの断片を取得でき,一方,消費した電力は80%に抑えることができることを確認した.