表情識別時と個体識別時の眼球運動の差異に関する研究
須川 真佑 (0951070)
ヒトの視覚系は中心視・周辺視のメカニズムを有しており,眼球運動によって
中心視を興味対象に向けることで,顕在的な注意の割り当てを実現している.し
たがって,行動レベルとしての眼球運動 (注視行動) は顕在的な特徴抽出の表出で
あると言われている.表情識別,個体識別共に眼球運動を用いた研究は過去に多
く存在する.表情識別時と個体識別時には目鼻付近に注視点が集中するとされて
きた.しかし,表情識別と個体識別の同一実験条件下での明確な比較は存在しな
い.表情識別と個体識別は課題が異なるため,その際の注視行動は同一でないと
考えられる.そこで本研究では,表情識別と個体識別の 2 つの課題を、視覚刺激
などの条件を揃えた実験を行うことにより,注視行動にどのような違いが生じる
か調べた.実験の結果から,注視点は表情識別時と個体識別時共に先行研究同様
に目鼻付近に集中したが,表情識別時は個体識別時より顔全体に注視点が分散す
ることがわかった.