患者個人のCTへ位置合わせ可能な椎骨テンプレートの開発

坂部 祥貴 (0951061)


近年,腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎外科手術において,内視鏡手術が試みられるようになってきた.内視鏡下脊椎後方手術(Microendoscopic discectomy)において,患者の椎間関節をより温存し,安全に治療をおこなうために,術中ナビゲーションを用いた手術が注目されている.術後の脊椎への負担を最小限に抑えるために,綿密な計画や切削後の強度評価が望まれている.患者ごとに術後の脊椎にかかる応力分布を推定し,可視化することで定量的な指標に基づいた切削範囲の計画が可能となる.従来の構造力学解析ではCTから椎骨領域を抽出し,メッシュを作成後に物性値や境界条件を設定する流れが一般的だが,医用画像上では椎骨間の境界が明瞭でなく,自動抽出が難しい.また,患者個人の医用画像ごとに上記の作業を繰り返す必要がありセットアップに時間を要している.

本研究では物性値や境界条件をあらかじめ付与した椎骨の三次元形状モデルをテンプレートとし,患者の医用画像に合わせて変形・位置合わせをすることで,セットアップに要する時間を大幅に削減することを考える.力学解析に必要な椎骨の形状・物性値,境界条件の情報に加え椎骨が持つ解剖学的特徴を保持したテンプレート(椎骨テンプレート)を構築する.はじめに椎骨の位置,大きさを合わせるために,患者データに対して回転・拡大縮小・平行移動(アフィン変換)による位置合わせを行う.次に患者データから解剖学的情報を抽出し,位置合わせする際の基準点として与えることで局所的な形状の位置合わせを行う.本テンプレートを患者データに位置合わせすることで,症例ごとに逐次モデルを作成することなく,切削・応力解析を表現する方法を提案する.テストデータに提案手法を適用し検証した結果,作成した椎骨テンプレートを患者個人のCTボリュームデータに位置合わせし,定量的な指標で評価することで提案手法の有用性を確認した.また,従来方法で時間を要したセットアップが数秒で可能になることを確認した.以上のことから,提案方法から開発した患者個人のCTに位置合わせ可能な椎骨テンプレートは患者個人への位置合わせが可能であり,術前計画への利用へ向けて貢献したものと考える.