テスト実行時における初期温度均一化のためのパターン生成法

小副川絵美子 (0951051)


近年,LSIの製造プロセスの微細化に伴い,劣化がLSIの品質や信頼性を保証するための重大な問題となっている. 劣化はLSIのフィールド使用時に遅延値の増加として現れるため,出荷テストでは検出することは難しく,突然のシステム障害を引き起こす可能性がある. このような障害発生を未然に防ぐために,フィールドテストにおける劣化検知が重要な技術となっている. 劣化検知は遅延テストや遅延測定を用いて行われる. 遅延測定では,出荷テスト時の遅延値に比べて,フィールドテストで測定した遅延値がどの程度増加しているか(遅延値変動)により劣化を検知する. しかし,遅延値変動は,測定時の温度に依存するため,空間的・時間的な温度のばらつきが大きいテスト実行時の回路温度では,劣化による遅延変動のみを求めることは困難である.

そこで,本研究では,テスト開始時の回路温度を短時間で空間的に均一に設定するためのパターン生成法を提案した. 提案手法は,テスト開始時に均一化したい温度に必要となる電力を求め,その電力を消費する単一のスキャンパターンをスキャンチェーン毎に生成し,生成したパターンを繰り返しスキャンシフトすることで温度均一化を実現した. 評価実験では,提案手法が目標温度に対して少ない誤差で均一化可能であることを確認できた.

本発表では,提案手法である初期温度均一化パターン生成法の詳細と提案手法をを3つのベンチマーク回路に適用したときの目標温度との誤差を報告する.