大規模三次元データにおける内部構造の探索のための大きさと曲率を指標としたボリューム可視化法の開発

衛藤 聖 (0951016)


近年,医療や生物学など様々な科学分野では,大規模な3次元データ(ボリュームデータ)が取得されている. この膨大なデータの内部構造を探索し, 有用な情報を効率的に取得することが望まれている. 本研究は,特に医用・生物学データを対象とし,データの内部に埋もれた多様な局所構造を効率的に可視化することを目的とする.

ボリュームデータの内部構造を探索するために,ボリュームレンダリング(Volume Rendering)技術を用いた可視化が広く利用されている. ボリュームレンダリングによって得られる結果画像は, 3次元のデータ分布に対し色(RGB)値・不透明度(Alpha)値を割り当てる伝達関数(Transfer Function)に大きく依存している. 従来の可視化では,ボリュームデータが持つスカラ値のみを指標とした一次元伝達関数が主流であり, 同一スカラ値を持った異なる局所領域を区別することができなかった. この問題を解決するために,勾配や曲率など局所的な形状特徴を表現する指標を新たに加えた 多次元伝達関数が研究されているが,多様な局所構造の種類や大きさ等 を考慮した柔軟で直観的な可視化は未だ課題となっている.

本研究は,伝達関数の新たな指標として局所構造の大きさを導入する. 元画像の複数解像度(マルチスケール) データからなるスケール空間を構築し,ボリュームデータに含まれ る局所構造の各領域に適したスケールを保持するRadius field を生成する.そし て,ボリュームのスカラ値,曲率値,スケール値から,色値・不透明度値を 決定する新しい多次元伝達関数を設計し,それぞれの指標をユーザがパラメータ で対話的にコントロールすることにより,3 次元画像データ内の特定の構造を様々なスケールで自 由に強調・抑制することができる可視化手法を目指す.

本発表では,提案手法を医用・生物学データに適用した結果と評価について報告する.その後,本手法の大規模データへの適用について考察を加える.