転移がん細胞における細胞駆動張力計測システムの開発
西田 実加 (0851149)
がん細胞をはじめとして、細胞移動は細胞の持つ基本的な機能の一つである。
細胞が移動する際には、駆動するための力を発生させていると考えられ、
その駆動力を計測できれば移動に関わる機構が解明されると期待される。
また、がんの転移のメカニズムが明らかにされると期待される。
そこで本論文では、がん細胞の移動時に発生する駆動張力を計測するシステムを開発した
。ここで細胞の駆動力とは"細胞が自身で移動するときに発生する力"と定義する。
本計測システムでは、細胞が移動するときに周囲の組織に張力が発生するモデル系として、
弾性のあるアクリルアミドゲルの薄膜上で細胞培養し、
細胞が張力を発生させることで起こる弾性変形を光学顕微鏡と画像解析技術を用いて計測する。
ガラスボトムディッシュのカバーガラス上にアクリルアミドゲル(厚さ50μm)をコートし、
その上をコラーゲンコートしたものを細胞培養に用いる。張力による弾性変形の計測のために、
アクリルアミドゲルには蛍光粒子(直径200nm)を埋め込むことで、
細胞の観察とは独立にゲルの変形を画像計測できるようにしてある。
細胞の観察には微分干渉顕微鏡法を用いる。細胞を用いた実験では、
マウス骨肉腫細胞であるDunnを培養し、
細胞がコラーゲン上を移動する際に発生する弾性変形を計測した。
その結果、細胞が移動する際に平均27nmの粒子変位が観測された。
細胞が移動する際に発生する力を定量計測できることを示している。