αE-cateninvinculinによる細胞接着制御機構の構造的基礎の解明

大迎卓也 (0851143)


上皮組織では細胞の側面に高度に発達した細胞接着システムが形成されて,組織の形態形成,細胞運動や細胞極性の形成・維持などの様々な役割を果たしている。昨今、接着結合は張力刺激によりシグナル伝達調節が行われていることが示唆されている。その生命現象を解明する為に、本研究ではαE -cateninと呼ばれるタンパク質を研究対象とする。

接着分子であるcadherinは接着結合形成を担う主要な分子であり、細胞膜動態の変化や細胞骨格系の再編成と協調的に接着結合を制御している。重要なことは、αE-cateninvinculinを介して、cadherinはアクチン細胞骨格との相互作用が安定化されることである。αE-cateninvinculinの相互作用は以前から知られていたが、最近になってこの相互作用は、アクチン張力依存的な動的相互作用であることが細胞生物学的実験から提案されている。それによると、アクチン張力が作用していない時は、αE-cateninvinculinの集積を阻害する構造を形成するが、アクチン張力が作用している時は、αE -cateninの阻害構造は解除されて、vinculinの集積が起きると結論されている。しかし、その詳細な機構は明らかとなっていない。そこで本研究では細胞接着の動的な制御機構の解明を目的として、αE-cateninvinculinの結合制御機構を構造生物学的アプローチによって明らかにする。また、生化学的実験やバイオインフォマティクスによるフォールド予測を行った。これらのデータを統合して、αE-cateninvinculinの結合阻害様式について発表する。