地上デジタルテレビ放送の受信性能改善

辛 芸斌 (0851137)


日本の地上デジタル放送では,1チャンネルの帯域で家庭向けのハイビジョン放送と,携帯端末向けのワンセグ放送が同時に伝送されており,用途に応じて選択して受信できる.本研究では,主に地上デジタルテレビジョン放送を移動体において受信する際に,受信品質を向上させるためにはいつく問題点が挙げられる.デジタル放送の特性劣化の要因の一つとして,伝送中に加わるインパルス雑音が挙げられる.インパルス雑音は様々な雑音源の存在する都市や車内の電子機器などにおいて普通に発生し,放送の受信特性に大きな影響を及ぼす.その影響を軽減するため,ガードバンド帯域を用いて,周波数領域でインパルスを推定し,また,時間軸において除去する手法を提案し,その特性を評価する.

また,地上デジタル放送に用いられているOFDMでは,従来の単一キャリア伝送方式に比べて周波数利用効率に優れ,ガードインターバルの採用により,マルチパスフェ─ジング環境下においても優れたビット誤り率特性を提供可能としている.ただし,遅延広がりはそれ以上となった場合は,シンボル間干渉及びキャリア干渉により受信特性が悪化する.これは特に地上デジタル放送で行われる予定である同一周波数中継(Single Frequency Network:SFN)が行われている際に問題になると考えられる.干渉波の影響を軽減し,受信性能の劣化の改善という課題を解決することを目指し,二つ方式を提案し,その特性改善効果を比較する.第1の方式は送信シンボルの再構築により,先行シンボルからの干渉を避けるものである.また,第2の方式では干渉部分を適切なマスクをかけることにより影響を軽減し,さらに等化器部分においてはベイズの定理により送信信号を推定する.その結果,従来の方式に比較して,ビット誤り特性の劣化を軽減でき,提案手法の有効性を確認した.