長波直接拡散スペクトル拡散信号とループアンテナアレイを用いた無線タグの簡易存在領域判定手法

渡部進一（0851134）

　現在，位置認識技術を用いたシステムが注目され，位置認識の精度を高める研究が盛んに行われている．しかし，そのようなシステムにおいて，必ずしも物体の位置を正確に知る必要のあるものばかりではない．一般に，無線を用いた高精度な位置検出システムにおいては，波長の短い(周波数の高い)，演算量の多い，高価な装置が必要になる．そのため，自動車の鍵といった小さな装置に導入する場合にはバッテリー容量および導入の容易さといった点で不向きである．

　本研究では物体の検出を距離ではなく領域で判定する，演算量を抑えた簡易な検出手法の考案を主眼として，長波信号を直接拡散スペクトル拡散（Direct-Sequence Spread Spectrum; DS/SS）変調した信号を用いた送受信機のアンテナ構成を提案する．提案システムでは，送信ループアンテナの向きにより2 つの領域が決定される．提案システムにおいて，小型受信機がどちらの領域に存在するかを判定する簡易位置検出方法を提案する．本手法では，1 つのループアンテナから送信される参照信号と，2 つのループアンテナから送信される遅延信号との内積の符号により，受信機が存在する領域の判定を行う．符号相関を0 にする拡張M 系列と内積を利用することで，送信機の周囲1 m の範囲において受信機の存在領域を高い確率で特定できることを明かにした．