多値ボリュームラベルに含まれる境界構造を反映した四面体メッシュの構築

藤吉泰晴 (0851104)


 CTやMRIなどの撮像技術の進歩によって,臨床現場では日々大規模な医用画像集合(ボリュームデータ)が撮像されている. このボリュームデータから生体臓器の三次元形状や力学特性を反映したメッシュモデルを構築し,異なるモダリティ間の位置合わせ,術前計画や力学機能解析などの様々な用途に利用することが考えられている. CTやMRIによってイメージングされた画像には,撮像対象が持つ複数の構造情報が含まれている.例えば,肺の区域や歯の組織が持つ複雑な解剖学的構造は, 構造ごとに固有の値が割り当てられた多値のボリュームデータ(多値ボリュームラベル)として表現される. このため,臓器の解剖学的構造に基づいた高精度な力学解析や位置合わせを達成するためには,これらの解剖学的構造を反映した,多値のボリュームデータを前提として,その多値ボリュームラベルに含まれる境界構造を反映したメッシュ生成が求められる.
 本研究では,解剖学的構造に固有のラベルが付与された多値ボリュームラベルを対象とし,その境界構造を反映した任意の詳細度の四面体メッシュを直接的に生成する手法を提案する.本アプローチでは,多値ボリュームラベルが持つ幾何学的な特徴量に基づいて,さらに頂点間の密度を考慮しながら頂点を配置することで,少ない頂点でも境界構造を維持したメッシュを生成する. 具体的には,多値ボリュームラベルの曲率分布を求め,曲率に応じて頂点を生成する.頂点生成の際,頂点が代表する領域を定義する境界球マップを作成することで頂点密度を制御可能とする. 四面体メッシュ生成後に境界が正しく構成されているかを調べ適宜モデルを修正する.
 本発表では,まず,提案方法について説明する.次に,提案方法を用いることで,幾つかのテストデータにおいて,あらかじめ等値面を生成することなく境界構造を反映したメッシュを生成できることを確認し,また,歯と肺のCTデータについて提案方法を適用した結果,境界が正しく構成されない四面体メッシュの数を減少させることができたことについて報告する.